第二部 食料文明国家構想(食が作る新しい日本)

循環型内需経済の例

― 捨てる社会から、循環する社会へ ―

はじめに

日本は資源の少ない国だと言われる。
しかし、本当に資源が少ないのだろうか。
毎年大量の食品が廃棄され、まだ使える製品が捨てられ、多くのエネルギーが熱として失われている。
私たちは資源が不足しているのではない。
資源を一度しか使わない社会を作ってしまったのである。
食料文明国家が目指すのは、海外から資源を買い続ける国家ではない。
国内にある資源を何度も循環させる国家である。

なぜ循環型内需経済なのか

現在の経済は
海外から輸入
国内で消費
焼却・廃棄
という一直線の構造になっている。
これでは資源もお金も海外へ流れ続ける。
一方、循環型内需経済では、
国内資源
加工
利用
回収
再資源化
再び国内で利用
という輪が生まれる。
一度輸入した資源を何度も使うことで、日本全体の豊かさを高めるのである。

食品ロスを飼料へ

年間数百万トンに及ぶ食品ロスは、本来であれば家畜の飼料となる資源である。
家庭では最新の乾燥処理装置によって水分を除去し、軽量化・衛生化する。
飲食店では自走式回収コンテナが夜間に自動で集積所へ向かう。
集められた乾燥食品は地域のエコフィード工場で加工され、
養豚・養鶏・酪農へ供給される。
海外から輸入していた飼料の一部を国内資源へ置き換えることができる。
「生ゴミ」は都市が毎日生み出す資源へと変わる。

家畜排せつ物を肥料へ

家畜の排せつ物は高品質な有機肥料となる。
その肥料で農地を育て、
収穫された作物は人や家畜の食料になる。
食料循環はここで閉じる。
農業と畜産を分けて考える時代は終わる。

木材資源の循環

森林から切り出された木材は、
   住宅
   家具
   建築材
として長期間利用される。
役目を終えた木材は、
   木質ペレット
   バイオマス発電
   木炭
などへ再利用される。
森林は資源であると同時に国土保全にもつながる。

都市鉱山

日本には膨大な量の携帯電話、家電、自動車が存在する。
その中には、
   金
   銀
   銅
   レアメタル
などが含まれている。
これらを「都市鉱山」として回収することで、海外鉱山への依存を減らすことができる。
一部では実際におこなわれているが、まだ規模も小さく、コストもかかりすぎている。

排熱の利用

   工場
   発電所
   ごみ焼却施設
   データセンター
これらは大量の熱を捨てている。
その熱を
   農業ハウス
   温水プール
   地域暖房
   養殖施設
へ供給することで、
一つのエネルギーを二度利用できる。これも現在は、少なすぎるので効率が悪い。

循環型内需経済が生み出すもの

循環は環境政策ではない。経済政策でもある。
   回収する人が必要になる。
   加工する工場が生まれる。
   設備を作る企業が育つ。
   地域に仕事が増える。
輸入が減れば、その分のお金が国内を循環する。
つまり、
「資源が回る」だけではない。
「お金も仕事も地域を回る」のである。

現在の経済

輸入
消費
焼却・廃棄

循環型内需経済

国内資源
加工
利用
回収
再資源化
再利用
国内経済へ循環

まとめ

豊かな国とは、多くを輸入する国ではない。
限られた資源を何度も活かし、お金・資源・仕事が国内で循環する国である。
食料文明国家が目指すのは、「捨てる経済」から「循環する経済」への転換である。
ここでは、小さな循環の例をとりあげました。しかし、循環経済は、もっと大きな日本全体で循環するような政策もあります。人材の提供元でもある教育から、様々な産業から医療・福祉までつながるような国内だけで完結して、雇用と成長を生み出すのです。
循環型内需経済で充分に豊かな生活が維持できる国家であればこそ、熾烈なグローバル競争市場にも乗り出せるのである。そのことを忘れるべきではない。